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第1章:廃墟の街、初陣
2025年、東京・新宿
街は静寂に包まれていた。だが、その静けさは不気味だった。EDF(地球防衛軍)第12歩兵部隊の新人、タカシ・アオヤマ二等兵は、隊長からの指令を受けながら緊張の面持ちで装備を確認していた。
「心配するな、新人。」
隣に立つベテラン兵のハル・カツラギが肩を叩く。年季の入ったアーマーと穏やかな笑みは頼りがいがある。
「初めての出撃はみんな怖いもんだ。でも、お前には俺たちがついてる。」
タカシは硬直した表情を隠しきれない。
「ありがとうございます、でも……本当に、俺たちで何とかなるんですか?」
答えはなかった。代わりに響いたのは、爆発音と共に地鳴りのような振動だった。
「接敵」
「敵の接近を確認!侵略生物ベータ、群れを形成してこちらに向かってくる!」
通信機からの冷たい報告が隊員たちを震わせる。
タカシが顔を上げた瞬間、遠くのビル群の間から黒い波のような影が現れた。それは巨大な昆虫型の侵略生物、「ベータ」だった。蟻や蜘蛛のような姿を持つ彼らは、群れで動き、圧倒的な破壊力で街を飲み込む。
「奴らが来るぞ!全員、陣形を整えろ!」
隊長のカイト・ミヤザキが叫ぶ。威圧的な声ではないが、その緊迫感に全員が従う。
EDF兵士たちは各自の武器を構え、車両や瓦礫の影に身を隠した。空気が重く張り詰める中、タカシは震える手でアサルトライフルを握りしめた。
「戦闘開始」
ベータの群れが視界に入るや否や、隊員たちは一斉に攻撃を開始した。
「撃て!撃て!奴らを近づけるな!」
カイトの指示に従い、EDFの火力が一斉に火を噴く。アサルトライフルの連射音とロケットランチャーの爆音が交錯し、街全体に響き渡る。
「左側面が薄いぞ!誰か援護に回れ!」
ハルが叫びながら、正確な射撃で次々とベータを仕留めていく。
タカシは引き金を引く手が震える。迫り来る敵の赤い目と鋭い顎が彼の視界を埋め尽くす。
「落ち着け、タカシ!狙うんだ、撃て!」
ハルが背後から叫ぶ。
「くっ……!」
タカシは意を決して引き金を引いた。連射される銃弾がベータの硬い外殻を打ち砕き、一体が崩れ落ちる。初めての成功だった。
「よくやった、新人!次だ!」
タカシは荒い息を吐きながらも次の標的に向かう。彼の目の前で、EDFの仲間たちが敵を迎撃し、少しずつ前進していく。
「空からの脅威」
しかし、安心する暇はなかった。遠くの空で何かが光ったかと思うと、巨大な輸送船が空に現れた。敵の母船だ。その底部が開き、無数の敵が空から降下してくる。
「新たな敵部隊だ!空から来るぞ!」
隊長のカイトが叫ぶ。EDF兵士たちが空を見上げると、そこにはドローン型の敵兵器「インセクト・ボマー」が群れを成して降り注いでいた。
「対空武器を準備しろ!ナナミ、上空を援護しろ!」
航空兵のナナミ・タカハシがすぐさま反応する。ジェットパックで空中に浮き上がり、レーザーガンを発射してドローンを次々に撃墜していく。
「タカシ、俺たちは地上の敵を片付けるぞ!」
ハルがタカシを鼓舞しながら、ベータの群れに向かってロケットランチャーを放つ。その爆風が数体の敵を巻き込み、一気に道を開ける。
「犠牲と覚悟」
戦況は苛烈を極めた。EDFの兵士たちが次々と倒れ、敵の猛攻は一向に止む気配がない。
「くそ、全滅するぞ!」
ハルの声が悲痛だった。
その時、隊長のカイトが叫んだ。
「諦めるな!ここを守らなければ、市民が逃げられない!」
彼の言葉に全員が気を引き締める。タカシも恐怖を振り払うように叫んだ。
「俺たちは負けない!地球を守るんだ!」
仲間たちが互いに支え合いながら、必死に戦い続ける。その姿は、ただの兵士ではなく「守護者」と呼ぶにふさわしかった。
「勝利の瞬間」
戦いは数時間に及んだが、EDFの兵士たちは最後まで踏ん張り続けた。タカシも新たな敵を次々と仕留め、やがてベータの群れは壊滅状態となる。
「敵の母船が撤退するぞ!」
ナナミが空を指さして叫ぶ。母船は煙を上げながら去っていった。
街にはようやく静寂が戻った。しかし、それは決して平和の訪れではなかった。瓦礫と血で汚れた大地、そして倒れた仲間たちが、戦いの苛烈さを物語っていた。
「次なる戦いへ」
カイトは疲れ切った部隊を見渡し、無線を握りしめた。
「こちら第12部隊。敵は撃退した。だが……犠牲が大きすぎる。」
その報告に、本部からの通信が返ってくる。
「第12部隊、ご苦労だった。しかし、休む間もない。次の侵略生物群が南から進行中だ。」
タカシはその言葉に目を見開いた。彼の初陣は、終わりではなく始まりに過ぎなかったのだ。
「全員、準備を整えろ。次の戦場に向かう。」
カイトの指示に、隊員たちは黙って頷く。生き残った者たちは、再び立ち上がった。
(続く……)
地球防衛軍の物語は、終わりなき戦いの中で紡がれる。彼らの希望は、たった一つ──地球を守ること。それだけだった。