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コンテンツ
- 「防げるはずの火災」が、なぜ繰り返されるのか
- ◆なぜ「迎え火」は危険とされるのか?
- ◆防火帯整備の人手と予算、そして「土地の問題」
- ◆世界ではどうか? カリフォルニアとの比較
- ◆山林火災の政治的無関心
- ◆テクノロジーの進歩と、古典的手法の融合を
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近年、地球規模で気候変動が深刻化する中、各地で山林火災の「同時多発」が報じられるようになってきた。2025年春、カリフォルニア、韓国、そして日本でも岩手県大船渡市、岡山県、愛媛県などで相次いで山火事が発生した。こうした現象は偶然の一致に見えるかもしれないが、果たしてそうだろうか。そして、それ以上に不思議なのは、こうした火災報道において、延焼を防ぐために世界各国で活用されてきた「防火帯」や「バック・ファイア(迎え火)」といった古典的かつ実効的な手段の言及が、ほとんど見られないという点である。
山林火災は、単なる自然災害にとどまらず、人間社会や経済、さらには安全保障にまで影響を及ぼす。たとえば、アメリカ・カリフォルニア州では、数百棟の住宅や商業施設が焼失し、復旧に数千億円規模の費用がかかっている。韓国では、住宅地のすぐそばまで火の手が迫り、数千人が避難を余儀なくされた。日本でも、2024年から2025年にかけて山林火災の発生件数は明らかに増加しており、かつてない規模での延焼が相次いでいる。
このような状況にもかかわらず、ニュース報道は「乾燥した空気」「強風」「気温の上昇」といった自然要因に焦点を当てる一方で、具体的な延焼防止策の実施や、現場での対応策についてはあまり掘り下げていないように見える。なぜ、かつて山火事対策として多用されてきた「防火帯の設置」や「迎え火の使用」といった戦略が話題にすらならないのか。この問いは、単なる報道の偏りの問題ではなく、防災そのもののあり方に深く関わるテーマである。
伝統的な火災対策 ― なぜ語られないのか?
「防火帯(firebreak)」とは、火の進行を止めるためにあらかじめ木を伐採したり、草を焼いたりして、可燃物のない空間を作る手法だ。延焼経路を断ち切ることで、火災の広がりを抑える効果がある。もう一つの手法「迎え火(バック・ファイア)」は、あえて火災の進行方向の先に火を放ち、先に燃料を燃やしてしまうことで、大火との接触地点で相殺させるという高度な戦術である。これらはいずれも、古くから山火事対策の現場で実践されてきた。
しかし、2020年代に入ってから、これらの戦術についての言及は極端に減った。たとえば日本では、林野庁の公式資料や地方自治体の対応指針にも、「防火帯」の設置に関する実施記録はあっても、一般報道や住民への周知の中ではほとんど言及されない。ましてや「迎え火」に至っては、一般の理解が難しいこともあり、ニュースではまず見かけない。
これは、いくつかの要因が複合的に関係していると考えられる。
1つ目は法的・制度的な制約である。たとえば迎え火の実施は、制御不能なリスクを伴うため、許可や熟練の火消し部隊の存在が前提となる。行政手続きや責任の所在の明確化が難しく、結果として「実行しないほうが安全」という判断になりやすい。
2つ目は報道のフレーミング効果である。報道機関は「なぜ火災が起きたか」に関心を向けがちで、「どう防げたか」や「どんな戦術が使われたか」については報道価値が低いと判断されやすい。これは視聴率を優先する構造上の問題でもある。
3つ目は市民の関心の変化である。防火帯や迎え火といった技術的な話よりも、「誰が被害に遭ったか」「避難はどう行われたか」といったヒューマンストーリーが重視される時代になっている。自然災害が「エンタメ化」されつつある現代において、炎と闘う現場の知恵が見えづらくなっているのだ。
防火対策の失伝と、それが意味するもの
「防火帯」や「迎え火」のような対策が語られなくなっているという現象は、単に報道姿勢の問題だけでなく、防災文化そのものの衰退を示している。かつて日本の山村地域では、住民自身が消防団を組織し、山林火災の初動対応に積極的に関与していた。山の風向きや湿度、樹種ごとの可燃性といった「土地勘」に基づく判断は、マニュアル化できない知恵として、地域に根付いていた。
ところが過疎化が進むにつれ、こうした知恵の継承は途絶えていった。防火帯を整備するにも人手が足りず、迎え火の判断を下せる経験者も減っている。自治体にとっては、人員や予算の限界もあり、山火事への事前準備に十分な体制をとることが難しくなっている。
加えて、気候変動による不確実性が、防火戦略そのものを難しくしている。これまでなら「この風なら迎え火が効く」とされた条件も、突風や予期せぬ湿度低下により一転してリスク要因になりうる。こうした状況では、保守的な判断が優先され、結果として「なにもしない」選択肢がとられやすい。
このように、山林火災が同時多発的に発生する中で、防火帯や迎え火といった対策が実行・言及されない背景には、制度、報道、文化、そして気候の変化という複雑な要因が絡み合っている。だがこのままでは、「なぜ燃えるのか」は語られても、「どうすれば防げるのか」は語られないまま、被害が拡大し続ける危険性がある。次ページでは、こうした状況を打破するための政策提言や、国内外の成功事例に目を向けていきたい。
「防げるはずの火災」が、なぜ繰り返されるのか
— 防火帯・迎え火が機能しない社会構造
前章では、山林火災が「同時多発」している状況の中で、延焼を防ぐための基本的な手法――防火帯や迎え火(バック・ファイア)――がほとんど取り上げられていない現実について、その背景にある制度・文化・報道の問題点を整理した。ここではさらに掘り下げて、「本来なら防げた火災」がなぜ繰り返されるのか、現場と政策のギャップ、そして未来の火災対策のあり方について考察していく。
◆なぜ「迎え火」は危険とされるのか?
迎え火(バック・ファイア)は、一見すると逆説的な手段だ。火を止めるために火をつける――これは非専門家にとって非常に危険な行為に見えるだろう。だが、十分に訓練された消防隊や山林管理の専門家にとっては、風向きと燃料量を見極めて安全にコントロールすることで、火災の広がりを抑える強力なツールになる。
それにもかかわらず、日本ではこの手法がほとんど実施されていない。これは単に知識不足ではなく、**「失敗が許されない社会構造」**が関係している。たとえば、迎え火に失敗して火災が拡大した場合、誰が責任を取るのか。現場の消防隊長なのか、自治体の首長なのか、それともボランティアなのか。このあいまいさが、実行を阻む最大の要因になっている。
法制度もこの不安定さに拍車をかけている。日本の消防法や森林法では、故意に火をつける行為は原則として禁止されており、特別な許可を得るには煩雑な手続きを要する。火災発生時の緊急判断に対し、行政は柔軟な対応をとりにくい。リスク回避の観点から、「何もしないほうが無難」という空気が、結果として延焼を許してしまう構造ができあがっているのだ。
◆防火帯整備の人手と予算、そして「土地の問題」
一方、防火帯についてはより現実的な問題が横たわっている。それは、人手と予算、そして土地の所有権の問題だ。
防火帯は、事前に木々や下草を伐採して「燃えるものがない空間」を作る作業である。そのためには、チェーンソーや重機が必要であり、事前に作業範囲の測量と許可も必要だ。特に民間所有地が多い日本の山林では、「防火帯を整備しようとしても、誰の土地か分からない」ケースが多発している。国有林では比較的対応がしやすいが、実際の火災の多くは、里山や市街地に近い私有林から発生している。
森林所有者が高齢化し、不在地主になっている地域では、そもそも防火帯の整備どころか、日常の管理さえ行われていない。その結果、下草や枯れ木が堆積し、「燃料」が豊富にある状態が常態化している。火災は、その“準備された場所”を狙っているかのように拡大していく。
防火帯を整備するには、事前に広範囲の森林所有者と連絡を取り、合意形成し、作業を委託する必要がある。こうした行政的プロセスは時間がかかるうえ、緊急時には実行不可能だ。結果として、日本の多くの地域では、「火災が起きてから対応する」体制しかとれない状況が続いている。
◆世界ではどうか? カリフォルニアとの比較
一方で、たとえばカリフォルニアでは、広大な国有林を抱える中で、迎え火や防火帯が積極的に用いられている地域も存在する。特に2020年以降、山火事による被害が深刻化するにつれ、現場の自治体と消防署が共同で防火計画を立てる取り組みが増えてきた。
「プレスクライブド・バーン(計画焼却)」という形で、乾燥期の前にあらかじめ一部の土地を意図的に燃やしておき、山火事の拡大を防ぐ試みが行われている。これは迎え火の発展系であり、事前の気象条件の調査や安全計画、地域住民への説明会などをセットで行う、極めて慎重な施策だ。
もちろん、これもリスクは伴う。過去には、計画焼却が制御不能になって被害を広げた例もある。だが、カリフォルニア州政府は、「何もしないリスクのほうが大きい」という前提に立ち、法整備や予算配分を行っている。こうした姿勢の差が、日本との対応格差を生んでいる。
◆山林火災の政治的無関心
なぜ日本では、このような抜本的な改革が進まないのか?その背景には、**山林火災が「選挙に影響しづらい災害」**という政治的な事情もある。
山林火災の多くは、都市部から遠く、人口の少ない地域で発生する。被害者数や経済被害の数字が比較的小さく見えがちなため、国政レベルの議論で取り上げられにくい。議会でも、都市インフラや経済対策、少子高齢化といった「票になりやすいテーマ」が優先され、山林対策は後回しにされることが多いのが実情だ。
しかし、これは極めて危険な姿勢だ。山火事は一度発生すれば都市部にも飛び火しうる。2023年のカナダで起きた山火事では、何百キロも離れたニューヨークまで煙霧が届き、航空便が欠航するなどの被害が出た。火災は「その地域の問題」ではない。環境、経済、健康、そして安全保障の問題なのだ。
◆テクノロジーの進歩と、古典的手法の融合を
では、これからの時代、どのように火災に立ち向かうべきなのか。
答えは「最新技術と伝統技術の融合」だ。近年は、ドローンによる火災監視、AIによる火災予測モデル、衛星画像のリアルタイム分析など、テクノロジーの進歩が目覚ましい。火の広がりを数分単位で予測できれば、迎え火の判断もより精密に行える。
一方で、こうした技術は万能ではない。データに基づく計算と現場の勘――風の匂い、草の湿り具合、鳥の飛び方――を融合させることで、真に効果的な対策が実現する。防火帯や迎え火という「アナログで危険な手法」を、安全に使いこなすためには、デジタルの補助が欠かせないのだ。
日本においても、これまでの「火災が起きたら消す」から、「火災が起きないように備える」体制への転換が急務である。そのためには、予算の再配分だけでなく、教育・訓練・法律整備までを含めた総合的な見直しが必要だ。