令和6年度税制改正に基づく定額減税について

令和6年度の税制改正により、所得税額の特別控除として「定額減税」が実施されることが決定しました。この制度は、所得税や住民税の負担軽減を目的としており、特に給与所得者や年金受給者を対象に、6月以降の給与支払い時や源泉徴収で減税額を控除する形で適用されます。

しかし、所得や扶養家族の状況によっては、「年末調整でも引ききれない減税額」が生じる場合があります。本記事では、そのような場合の対応策や手続きについて詳しく解説します。

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1. 定額減税とは？

定額減税は、令和6年度限定の特別控除制度であり、所得税や住民税の負担を軽減することを目的としています。

対象者

• 日本国内に住所を有する居住者
• 合計所得金額が1,805万円以下（給与収入のみの場合は約2,000万円以下）

減税額

対象者	減税額
本人	30,000円
同一生計配偶者（国内居住者）	30,000円/人
扶養親族（国内居住者）	30,000円/人

例：4人家族（本人、配偶者、扶養親族2人）の場合、総額120,000円の減税が適用されます。

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2. 年末調整における定額減税の処理

実施方法

定額減税は、給与所得者の場合、6月以降の給与支払い時に源泉徴収税額から控除されます。この際、扶養控除等申告書に基づき、本人および同一生計配偶者、扶養親族の人数に応じて減税額が計算されます。

具体的な流れ

1. 6月給与での控除開始
   初回の給与支払い時から源泉徴収税額に減税額を反映します。
2. 控除しきれない場合の対応
   6月給与以降も控除しきれない場合、年末調整で改めて精算が行われます。
3. 最終精算
   年末調整や確定申告で控除不足分を再計算します。

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3. 定額減税が「引ききれない」場合とは？

主な原因

1. 所得税額が減税額を下回る
   年収が低い場合や、他の税額控除（住宅ローン控除など）によって税額が大幅に減少している場合、所得税額そのものが減税額に満たないことがあります。
2. 扶養控除等申告書の記載漏れ
   同一生計配偶者や扶養親族の人数が正確に申告されていない場合、控除額が適切に計算されない可能性があります。
3. 複数の勤務先がある場合
   主たる勤務先以外では減税が反映されないため、控除不足が生じる場合があります。

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4. 引ききれない場合の「調整給付」

定額減税額が所得税額を超える場合、「調整給付」として不足分が市区町村から支給されます。

調整給付の仕組み

1. 給付の対象者
   • 定額減税が引ききれないと見込まれる方
   • 給与所得者や年金受給者が中心
2. 支給の流れ
   • 夏頃：市区町村が対象者を特定し、案内を送付。
   • 申請：該当者は指定された期日までに必要書類を提出。
   • 給付：支給額が確定後、該当者の口座に振り込み。
3. 追加支給の可能性
   年末調整や確定申告後、当初の給付額を超える不足が判明した場合、令和7年度以降に追加支給が行われます。

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5. 年末調整での対応ポイント

必要な手続き

1. 扶養控除等申告書の提出
   記載漏れや誤りを防ぐため、扶養親族や同一生計配偶者の状況を正確に記入してください。
2. 控除不足分の記録
   源泉徴収票の摘要欄に「控除済額」および「控除外額」を記載します。
   例：控除済額50,000円、控除外額70,000円の場合：コードをコピーする摘要欄：源泉徴収時所得税減税控除済額50,000円、控除外額70,000円
3. 従業員への説明
   控除外額が生じる理由や、調整給付の手続きについて分かりやすく説明することが重要です。

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6. 注意点と留意事項

給与支払い者の対応

• 年末調整時の確認
  控除外額が発生した場合、源泉徴収票に正確に記載する必要があります。
• 調整給付に関する案内
  市区町村が給付の担当であるため、会社が手続きに関与する必要はありませんが、従業員が正しく理解できるようサポートすることが求められます。

調整給付の対象外となるケース

• 年末調整や確定申告を行わない場合
• 所得税・住民税の課税がない場合

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7. まとめ

定額減税は、所得税・住民税の負担を軽減するための制度ですが、年末調整でも引ききれない場合が生じることがあります。その場合、市区町村からの「調整給付」により、不足分を補填する仕組みが用意されています。

給与所得者としては、事前に扶養控除等申告書を正確に記載し、年末調整や確定申告を通じて適切な精算を行うことが重要です。また、引ききれない場合の調整給付についても理解し、必要な手続きを行うことで、最大限の恩恵を受けることができます。

引ききれない減税額への対応に不安がある場合は、勤務先の総務担当者や税務署に相談し、適切なサポートを受けるようにしましょう。

定額減税が引ききれない場合の対策と具体例

前回のおさらい

前のページでは、定額減税の概要、年末調整での取り扱い、そして控除しきれない場合の「調整給付」の基本的な仕組みを説明しました。本ページでは、引ききれない場合に具体的に何をすべきか、調整給付の詳細、ケース別の対応方法を解説します。

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1. 定額減税の「控除外額」とは？

控除外額とは、定額減税を源泉徴収税額や年末調整で全額控除しきれなかった分を指します。この控除外額が発生する理由は次の通りです。

発生理由

1. 所得税額の不足
   収入が低い、または他の控除（住宅ローン控除、医療費控除など）で既に税額が減少している場合、減税額を控除する余地がなくなります。
2. 住民税の均等割のみ課税
   所得税や住民税の所得割が課税されない場合、控除対象となる税額が不足するため引ききれない可能性があります。
3. 複数の減税要因の重複
   ふるさと納税などの寄附金控除と併用すると、控除額が過剰になり、控除しきれない分が生じることがあります。

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2. 調整給付の詳細な仕組み

調整給付は、控除外額が発生した場合に不足分を補填する仕組みで、市区町村が給付手続きを担います。

給付までの流れ

1. 対象者の特定
   市区町村が源泉徴収票や給与支払報告書、住民税情報を基に控除不足額を算出。
2. 案内の送付
   対象者に給付案内が送られます。例年、夏ごろに通知が届く見込みです。
3. 申請手続き
   対象者は必要書類を提出。主に以下の情報を提供する必要があります。
   • 振込口座情報
   • 確認書類（本人確認、扶養家族の状況など）
4. 支給の実施
   市区町村が給付額を確定し、指定口座に振り込みます。通常、申請後1～3か月程度で支給されます。

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3. ケース別：引ききれない場合の対応

具体的なケースに基づき、どのように対応すべきかを見ていきましょう。

ケース1：低所得者で控除不足

例

• 本人の所得税額：10,000円
• 定額減税可能額：120,000円（本人+扶養家族3人分）
• 控除外額：110,000円

対応策

1. 年末調整で控除外額が記載された源泉徴収票を確認。
2. 市区町村からの調整給付案内を待つ。
3. 案内に従い、必要書類を提出。

注意点
扶養控除等申告書の記載内容を再確認。漏れや誤りがないか確認しましょう。

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ケース2：複数の勤務先で源泉徴収されている場合

例

• A社の源泉徴収税額：5,000円
• B社の源泉徴収税額：3,000円
• 定額減税可能額：60,000円（本人+扶養家族1人分）
• 控除外額：52,000円

対応策

1. 主たる勤務先での控除状況を確認。
2. 年末調整時に控除外額が記載された源泉徴収票を収集。
3. 確定申告で主たる勤務先以外の控除不足分を精算。

注意点
給与が複数箇所から支給される場合、確定申告が必須となるケースが多いため、早めに準備を進めましょう。

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ケース3：住民税が均等割のみ課税

例

• 所得税額：0円
• 住民税所得割：0円
• 住民税均等割のみ課税（5,000円）
• 控除外額：全額（所得税30,000円+住民税10,000円）

対応策

1. 市区町村からの調整給付案内を待つ。
2. 必要書類を提出して調整給付を受ける。

注意点
調整給付は市区町村単位で手続きが行われるため、案内が届かない場合は問い合わせを行いましょう。

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4. 調整給付に関するよくある質問

Q1. 調整給付の対象外となる場合は？
A. 所得税や住民税が課税されていない場合、調整給付の対象外となる可能性があります。ただし、扶養親族として計上されている場合は別途支援が行われることがあります。

Q2. 調整給付の支給額はどのように計算されますか？
A. 所得税・住民税の控除不足額を合算し、1,000円単位で切り上げた金額が支給されます。

Q3. 年末調整後に扶養親族が増えた場合は？
A. 扶養親族の変更は年末調整に反映されますが、調整給付には即時反映されません。翌年度以降の調整給付で対応される場合があります。

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5. 従業員・事業主へのアドバイス

従業員へのポイント

1. 扶養控除等申告書の記載漏れに注意
   同一生計配偶者や扶養親族の情報が漏れていると、控除額が正確に計算されません。
2. 源泉徴収票の確認を徹底
   控除済額および控除外額が正確に記載されているか確認しましょう。
3. 調整給付の案内に即対応
   市区町村からの通知を見逃さず、早めに手続きを進めることが重要です。

事業主へのポイント

1. 従業員への説明を徹底
   年末調整時に控除外額が発生した場合、調整給付の仕組みを分かりやすく説明することで、従業員の不安を軽減できます。
2. 正確な源泉徴収票の作成
   控除外額が発生する場合、摘要欄に正確な情報を記載してください。
3. 複数勤務者への対応を考慮
   他の勤務先がある場合、従業員が確定申告を行う必要があることを伝えましょう。

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6. まとめ

定額減税は、所得税・住民税の負担を軽減するための有効な制度ですが、引ききれない場合には調整給付が重要な役割を果たします。市区町村や勤務先と連携し、正確な手続きと対応を心掛けることで、最大限の恩恵を受けることが可能です。

控除不足のリスクを軽減し、スムーズに手続きを進めるためにも、事前準備と制度の理解を徹底しましょう。

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この記事では、具体的な対応策や調整給付の詳細、実務上の注意点を解説しました。引き続き、年末調整や確定申告のスムーズな実施に向けて準備を進めていきましょう。